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最高裁判所第一小法廷 昭和31年(あ)1152号 判決 1957年2月21日

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人青山樹左郎の上告趣意は、違憲をいうが、その実質は、原判決には、本件につきさきになされた最高裁判所の差戻判決の破棄理由に違反して審理を尽さないで差戻前の二審判決を被告人の不利益に変更した違法があるというに帰する。しかし、所論最高裁判所の判決は、検察官の上告申立に基き原判決を破棄したものであって、しかも所論のように単に執行猶予の年限や有罪の年限等だけを適当に整調さるべきが至当であると判示したのではなく、差戻前の二審判決は、結局被告人に前科のある点に関し審理不尽の違法があるといって同判決を破棄して事件を原審に差し戻したものである。そして、記録によれば、右差戻後の原審は、前科調書を取り調べ、且つ、弁護人の請求によって情状に関する証人を尋問した上、控訴趣意に逐一判断を加え、ことに、第一審判決の刑を相当として、本件控訴を棄却したものである。そして、本件差戻後の原審判決は、事後審として第一審判決の当否を審査した上これを維持したもので、自ら刑の言渡をしたものでないから、不利益変更の問題は起らない。されば、原判決には所論の違法は認められない。被告の上告趣意は、事実誤認、量刑不当の主張に帰し刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

よって同四〇八条、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 真野毅 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫)

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